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大阪地方裁判所 昭和48年(行ク)12号 決定 1973年6月25日

申立人 藤田淳 外二名

被申立人 大阪府収用委員会

訴訟代理人 二井矢敏朗 外二名

主文

申立人らの本件申立を、いずれも却下する。

申立費用は申立人らの負担とする。

理由

一  申立人らの本件申立の趣旨および理由は、別紙一<省略>のとおりであり、被申立人の意見は別紙二<省略>のとおりである。

二  当裁判所の判断

1  本件疎明資料によれば、被申立人は、昭和四八年三月二〇日(本件申立書に三月二日と記載されているが誤記と認める)、起業者堺市の申請に基づき、申立人らに対し、別紙一添付別紙記載の権利取得裁決および土地明渡裁決をしたことが疎明される。

2  そこで、申立人らの本件申立の許否について検討する。

(一)  収用裁決のうち、権利取得裁決については、執行の観念をいれる余地がないから、申立人らが、本件申立において停止を求めている対象は本件明渡裁決の執行であると解せられるところ、明渡裁決もそれ自体執行力を有するものではない。すなわち、土地収用法一〇二条、一〇二条の二第二項によれば、収用地又はその地上物件の占有者が明渡裁決に定められた明渡しの期限までに、収用地の引渡し、又は物件の移転をしないときに、起業者の請求により都道府県知事が、行政代執行法の定めるところに従い、自ら義務者のなす行為をし、又は第三者をしてこれをさせることができるとされているのであつて、このことからみても、明渡裁決は、明渡し又は移転義務の存在とその義務を履行すべき期限を定めるに過ぎないものであつて、それ自体執行力を有しないから、明渡裁決の執行停止を求める本件申立は理由がない。

(二)  仮に本件申立が明渡裁決の効力の停止を求めている趣旨であると解しても、(一)において説示したとおり、明渡裁決の存在を前提として行われる代執行を停止すればその目的-を達することができるのであるから、行政事件訴訟法二五条二項但書により、右効力の停止を求める申立も許されない(明渡裁決およびその代執行は、権利取得裁決を現実に実現するための一連の処分としての性質を持つとみることができるから、仮りに本件申立が、権利取得裁決の効力の停止を求めている趣旨だとしても、やはり明渡裁決の代執行を停止することにより、その目的を達しうることは同様であるから許されない。)。

(三)  なお、本件についての本案訴訟は、被申立人に対する本件権利取得裁決、明渡裁決の取消を求める訴訟であるが、既に起業たる堺市が大阪府知事に対し、本件明渡裁決が存在することを前提として、土地明渡しと土地建物移転の代執行の請求をしているのであれば、申立人らにおいて、大阪府知事を被申立人として(本件申立の相手方を変更して)その代執行手続の続行ないしその停止を求めることは可能である。しかし本件においては、堺市は大阪府知事に対し、代執行の請求をしていないのみならず、仮りにこれをしているとしても、本件疎明資料によれば、申立人らはいずれもその共有にかかる堺市宮山台一丁二番地一七地上所在、鉄筋コンクリート造陸屋根二階建居宅(延八六・三三平方米)に居住し、本件建物には居住しておらず、本件建物は現在道路上に孤立した状態にあり、事実上ここで営業をしているとは認められないこと、申立人藤田淳は、本件建物から約三〇メートル北東の堺市大浜北三丁三四番地に土地および建物(木造瓦葺二階建店舗、一階五九・六〇平方米、二階二五・八五平方米)を所有し、同所で男子専科の洋品店を経営していること、申立人らが本件建物を収去して本件土地を明渡さないのは、補償金の額および堺市が代替地の斡旋をしないことに不服があるためであること、が疎明されるのであつて、以上の事実によれば、知事の代執行によつて申立人らが損害を蒙るとしても、それは専ら財産的損害であり、金銭賠償によつて補填されうるものであるから、申立人らの蒙るべき損害をもつて回復困難な損害ということはできない。

従つて、本件被申立人を大阪府知事に変更して代執行手続の続行ないし代執行の停止を求める申立に変更させてみても、この申立もまた理由がないといわねばならないから、右変更手続を示唆する必要もない。

以上の理由により本件申立は、その理由がないことが明らかであるから、その余の点について判断を省略してこれを却下し、申立費用の負担について、民事訴訟法五九条、八九条を適用して主文のとおり決定する。

(裁判官 下出義明 藤井正雄 石井彦寿)

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